隣の花子さん

ホラーゲーム・怪談が好きです。 でも自分がプレイするのは平和なゲームばかり… ゲームネタを中心に思ったことを書いていきます。

父という名の隣人

今週のお題「おとうさん」 

 

 父が現在の私の年齢の時、私が産まれた。

 母と離婚してからもしばらくの間、父は私たち母娘の住まいのすぐ近くに住まいを構えた。

 普段は母と姉と過ごし、たまに父のマンションに遊びに行くという、今考えれば奇妙な距離感だが、 「おとうさんは仕事が忙しいから別の家に住んでいるのよ」という母の言葉を、当時の私は寸分疑わなかった。無邪気なものだ。

 ただ、(巧妙に隠されていただけかもしれないが)今思い返してみても父と母の間に険悪なものを感じたことは一度もなかった。健全なる精神状態で育てられたことは両親に感謝している。

 当時の父のヤンチャぶりは、その後婚姻を複数回繰り返していることからも想像に難くない。一度、突然家に遊びに行った時、父がバスローブ姿で登場したことがある。朧げだが布団も敷きっぱなしだった気も。もしかしたら急いで帰した女性がいたのかもしれない。

 その時のことを思い出すと、笑いとともにくすぐったい胸の痛みが込み上げてくる。父の気持ちを思うと、気が気でなかっただろう。

 

 久々に父に連絡してみようか。「あの時、女の人連れ込んでたの?」と。

 還暦を過ぎた今でも娘の前ではカッコつけたいあの父は、傷つくだろうか。それとも「そうなんだよ、黙ってても女が押しかけてきて困ったんだよ」とおどけるだろうか。

 そんな父の親心を、ようやく慮るようになった私は、今、母親になった。娘は夫にとても無邪気に懐いている。いじけたり親心をくすぐって気を引こうとするところも、私に似ている。願わくば、私がそうだったように、親は自分の物語の中で、絶対的な味方であることを信じていて欲しい。お父さんが、私にそう信じさせてくれていたように。